BluetoothでのAudio伝送(★)
[BLE(Bluetooth Low Energy), LE Audioの開発依頼は、フィールドデザインまでお気軽にお問い合わせください。]
ここでは、BluetoothでのAudio伝送について、歴史から説明します。
歴史
Classic Bluetoothでは、Audioを伝送するプロトコルやプロファイルが定義されてました。
音楽データを伝送するには、A2DP(Advanced Audio Distribution Profile)を利用し、
再生・停止などの制御には、AVRCP(Audio Video Remote Control Profile)を使います。
音楽データの圧縮には、主にSBC(Sub Band Codec)という周波数ごとに分割してフーリエ変換を使った圧縮方法を使います。
オプションで、AACやaptXなどを選択できます。弊社でもハンズフリーやオーディオ機器を開発したことがありますが、SBCは、普通にスピーカで聴いても低音から高音まで十分綺麗な音がでます。
なお、音声通話データ伝送用に、HFP(Hands Free Profile)というものもあり、マイクとイヤホンにモノラルで双方向転送する方式もあります。通話には高い音質もいらないことや、双方向になって帯域が足りないことから、8kHz/16kHzのサンプリングで音声を流しています(一部32kHzの独自方式もあります)。
データ通信はほぼすべてClassic BluetoothからBluetooth Low Energyに置き換わりましたが、Audio伝送に関しては、Bluetooth Low Energyがサポートしてないため、Classic Bluetoothを使わざるを得ない状態でした。
また、Classic Bluetoothでは、スマートフォンから左右独立のヘッドホンに、Audioを転送する際は、Left/Rightのどちらかにまとめて転送し、それをもう片方に転送するため、遅延が発生するという致命的な欠点がありました(いくつかは独自方式で同時に受信しているものもある)。なお、Audioを片方の耳に転送する際には、2.4GHzの信号は人間の脳に吸収されてしまい、反対の耳まで届かないため、いくつかのメーカ(Apple AirPodsなど)は、近距離磁気誘導(NFMI)を使って行っています。この方式の最大の欠点は、片方のイヤホンをなくすと、両方とも買い直さないといけないという点です。
Classic Bluetoothをサポートした半導体デバイスが消滅していく中で、Audio伝送をどう実現するかが近年の課題でした。
そのような背景の中で、Bluetooth Low EnergyのPHYを利用して、Audioを伝送するLE Audioがver5.2により規格化されました。片方のイヤホンを無くしても、1つだけ買い直せば良いようになります。
LE Audioの特徴
LE Audioの特徴には下記のものがあります。
- Classic BluetoothのA2DP(Advanced Audio Distribution Profile)やHFP(Handsfree Profile)の置き換え
- 複数チャネルによるマルチストリーム転送
- デバイス数に制限のないブロードキャスト転送
- LC3(Low Complexity Communications Codec)を使い、SBC(Sub Band Codec)より高音質なAudio伝送が可能
- LE Isochronous Channelsのサポートにより、リアルタイムストリーミングをサポート
LE Audioのユースケース
LE Audioのユースケースには下記のものがあります。
- スマートフォンからヘッドホンに接続し、LeftとRightにそれぞれ音楽データを同時転送する(Connected Isochronous転送を利用)
- 複数の友達に対して、1つのスマートフォンから全員のヘッドホンに接続し、音楽データを同時転送する(Sharing)
- 広場などで、不特定多数の聴衆に音楽データをブロードキャストする(Broadcast Isochronous転送を利用)
- 従来と同様のハンズフリー通話を行う
- 補聴器に適用する(低遅延で、長時間(8時間)のバッテリ駆動に耐え得る低消費電力)